T.チリン・・チリン・・ 「いらっしゃいませ・・・おや?」 確かに今ドアベルが鳴ったはずですが・・・ 風ですか?ね・・・ でも、ここは風は吹かないはずなんですが・・・ ちょっと見てきましょうか・・・ チリン・・チリン・・チリ・・ ふぅん、ドアはおかしくありませんね 「こんにちは」 「お・・・っと、こんにちは」 「驚かせてしまいましたか?」 「いえいえ、大丈夫ですよ。どうぞお入り下さい」 「入ってもよろしくて?」 「ええ、もちろんです」 「では、遠慮なく」 「先ほども女神様ですか?ドアベルが鳴ったので お客様かと思いましたが・・・」 「入ろうと思ったんですけれどちょっと恥ずかしくて・・・ こういう所に来るのは初めてなので」 「そうでしたか、遠慮なさらずにどんどんいらして下さいね」 「ありがとう」 「何にされますか?」 「そうね・・・ココア、温かいの」 「はい、かしこまりました」 「人間界は春ね」 「そのようですね、暖かい良い時期のようです」 「私の出番は終りね、次の時期まで」 「交代の時期ですね、お疲れ様でした。 お待たせしました、温かいココアです」 「ありがとう・・・あら?これは・・・」 「マシュマロです。生クリームの代わりです。 女神様には生クリームよりもマシュマロの方が お似合いの気がしまして」 「あら〜、ありがとう。マシュマロ・・・」 「どうかされましたか?」 「可愛いお話があるの。聞いてくれる?」 「はい、是非」 |
U. 「少し前の事だけれどね、人間界に私の事を信じていてくれて私の事が大好きだという女性がいてね。 私と言うより雪が大好きと言った方が正解かな」 「雪が大好きで、女神様の事も大好きなんですね」 「そうね。それでね、その彼女がね、猫と暮らしていたの」 「猫ですか・・・可愛いですね」 「あら、マスターは猫好きなの?」 「生き物は大好きですよ、猫に限らず」 「そう。それでね、その猫がね、子供の頃かしら 彼女が雪が降っている時にベランダに出て、 その子に雪を見せたのね。 初めて雪を見たのよ、その子」 「生まれて初めての雪ですか、びっくりしたんじゃないですか?」 「それがね、その子ったら、『白くてフワフワしてる、 マシュマロみたい!』って言ったのよ」 「マシュマロですか、可愛いですねぇ」 「でしょう?雪を見てマシュマロなんて・・・ 私、凄く嬉しくなっちゃって その日は沢山降らせちゃった」 「あらま、ポリアフ様、サービスしましたね」 「だって嬉しかったんですもの。 空からマシュマロが降って来るなんて 可愛いわよねぇ。 雪が降ると、人は寒い冬が終わって 早く暖かな春が来ないかしらって 皆思うのよ・・・寒い冬にも役割は あるのだけれど、人間は寒い冬を 自分の人生の辛い時期に置き換えて 考えてしまうのね。 でも、冬は永遠ではないわ。 必ず春は来るの、だから今度また 季節が巡って冬になったらあの子に 会いに行きたいわ。 ココアのマシュマロ見て思い出して、 また次のシーズンもその子に会えるといいなって」 「そうですね、会えると良いですね。きっと会えますよ」 「そうね、可愛い子なのよ。白くて、瞳がブルーで・・・」 ココアを飲みながら嬉しそうに話すポリアフ様でした。 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|
オリジナルショートファンタジーの「神々の憂鬱」は全てフィクションであり、 神話や伝説の登場人物に基づいた内容ではありませんのでご理解下さい。 尚、このコンテンツは不定期の更新です。ご了承下さいませ。 尚、過去作につきましてはバックナンバーでお読みいただけます。 |
この記事の一部及び全文の無断転載・コピーを禁じます |